安全基板「まもるくん」ってなに?
通常では連続通電できない通電率のソレノイドを連続通電させたい!
でも、吸引力もサイズも変えたくない……!
という思いをしたことはありませんか?
今回は、そんなときに役立つ、安全基板「まもるくん」について紹介してきます。
「まもるくん」とは
ソレノイドには、このような特徴があります。
吸引力<<<吸着力
ここでいう吸引力とは、プランジャー(可動鉄心)が出ている状態から引きつけるときの力、吸着力とは、プランジャーを引きつけた後に、引いた状態を維持する力のこととします。
つまり、同じ電力のとき、吸着力は吸引力に比べてかなり強いので、電力を下げても保持できるのです。
この特徴を利用するためには、はじめだけ大きな電圧をかけて、吸着したら連続通電可能な電圧まで下げるという制御が必要になります。でも、それって難しいですよね。
そこで!
つなぐだけでそれを可能にしたのが、安全基板「まもるくん」です。
「まもるくん」は、はじめに、短時間通常通りに電圧をかけて、ストロークが0mmになるまで引き付けます。その後、連続通電可能な消費電力になるよう、PWMで勝手に制御してくれます。
それによって、通常よりも小さい消費電力、つまり、小さい温度上昇でソレノイドを保持することができるのです。
約3cm×3cmの基板「まもるくん」をソレノイドにつなぐだけで、パワーもサイズもそのままで、連続通電させることが可能になります。
*PWM:高速で電圧のONとOFFを繰り返すことで、実質的な電力を調節する制御方式のこと。ONと OFFの割合を調節することで、一定の電圧からでも任意の電力に調節することができる。
*Duty:PWM制御での、ON時間の割合のこと。
詳しくは調べてみてね~
Dutyを調べる
早速ソレノイドを連続通電させたいところですが、まずは、連続通電が可能なPWM Dutyを下記の2機種で調べていきます。
・CA0520
・CA0830
ソレノイドの保証値がA種絶縁のため、許容最高温度は105℃で、ソレノイドの使用温度範囲は-5℃~40℃です。そのため今回は、温度上昇値が65℃以下となるDutyの範囲内で最大のものを、適切としました。下記の条件で、抵抗法を使って温度上昇試験をし、5%刻みで適切なPWM Dutyを求めます。
結果がこちらです。
CA0520
機種 | 通電率 | PWM Duty | 温度上昇値(℃) |
CA05200240(24Ω) | 6% | 25% | 50.90 |
CA05200380(38Ω) | 10% | 35% | 59.80 |
CA05200960(96Ω) | 25% | 45% | 54.61 |
CA05201920(192Ω) | 50% | 65% | 57.01 |
CA0830
機種 | 通電率 | PWM Duty | 温度上昇値(℃) |
CA08300120(12Ω) | 6% | 25% | 61.00 |
CA08300190(19Ω) | 10% | 35% | 63.63 |
CA08300480(48Ω) | 25% | 50% | 63.22 |
CA08300960(96Ω) | 50% | 65% | 53.54 |
それぞれの通電率に対する適切なDutyという見方をすると、2機種とも、大体同じになっていることがわかります。
結果から……
こちらを、連続通電が可能な最大のPWM Dutyとします
通電率 |
PWM Duty |
6% | 25% |
10% | 35% |
25% | 45% |
50% | 65% |
それでは、このPWM Dutyで連続通電させて、実際に保持することが可能なのかを調べていきたいと思います。
保持力を調べる
保持力は、下記の2機種について調べました。
・CA0830
・CA0837
この2機種の違いは、プランジャーと固定鉄心が直に当たるか否か、です。
CA0830は直に当たるのに対して、CA0837はゴムワッシャーが挟まれており、プランジャーと固定鉄心の間に隙間が生じます。
隙間があるものは、直当たりのものに対して極端に吸着力が弱くなってしまいます。
「まもるくん」の前提は、“吸引力<<<吸着力”でした。そのため、プランジャーと固定鉄心の間に隙間があって、吸引力と吸着力に十分な差がないソレノイドは、「まもるくん」を使うのに向いていないのではないかという懸念があります。
結果がこちらです。
CA0830
機種 |
通電率 | PWM Duty |
吸着力(N) |
|||
1 |
2 | 3 |
最低値 |
|||
CA08300120(12Ω) |
6% |
25% | 31.38 | 30.40 | 32.36 |
30.40 |
CA08300190(19Ω) |
10% |
35% | 35.30 | 36.28 | 37.27 |
35.30 |
CA08300480(48Ω) |
25% |
45% | 32.36 | 31.38 | 30.40 |
30.40 |
CA08300960(96Ω) |
50% |
65% | 30.40 | 30.40 | 28.44 |
28.44 |
吸引力と吸着力を比較すると……
吸引力に対して十分な吸着力が出ており、保持できることがわかります。
CA0837
機種 |
通電率 |
PWM |
吸着力(N) |
|||
1 | 2 | 3 |
最低値 |
|||
CA08370090(9Ω) |
6% |
25% | 17.65 | 21.57 | 10.79 |
10.79 |
CA08370140(14Ω) |
10% |
35% | 12.75 | 13.73 | 16.67 |
12.75 |
CA08370360(36Ω) |
25% |
45% | 9.81 | 9.81 | 10.79 |
9.81 |
CA08370720(72Ω) |
50% |
65% | 11.77 | 10.79 | 9.81 |
9.81 |
吸引力と吸着力を比較すると……
通電率50%のものは十分な吸着力が出ているものの、6%、10%、25%のものは吸引力のほうが強くなっており、吸引しても保持できずに戻ってしまう可能性があります。
まとめ
以上のことから、安全基板「まもるくん」を使うことで、吸引力もサイズも変えずに連続通電することができるということがわかりました。
ただし、「まもるくん」を使うには向き不向きがあり、ゴムワッシャー付きの機種では吸着力が十分ではないものもあるので、注意が必要です。
「まもるくん」使ってみてくださいね~