自己保持ソレノイドの選び方と使い方

まず、ソレノイドには大きく分けると3つの種類があります。

この記事では、③自己保持ソレノイドの選び方について説明していきます。

自己保持ソレノイドの選び方

  • 使用する電源(電圧)
  • 吸引力(負荷)とストローク
  • ON,OFF時間のサイクル(通電率)
  • サイズ

選び方の基本は、プル/プッシュソレノイドと同じです。

違いは自己保持ソレノイドには磁石が付いており、磁石の力で吸着状態を維持するという点です。

また、プランジャーが復帰状態(プランジャーが吸着されていない状態)で通電をOFFにしていても、無励磁吸引力(通電がOFFの時に、磁石の力でプランジャーを吸引しようとする力)で少し吸引力が働いています。

上のグラフは、CD0730という自己保持ソレノイドの吸引力-ストローク特性グラフです。

https://www.takaha.co.jp/SHOP/cd0730.html

グラフの赤い〇で囲んでいる部分が、磁石が吸着状態を維持できる力(吸着力)を示しています。 この、吸着力が必要な吸引力よりも小さいと、通電OFF後に吸着状態を維持できなくなるということです。 そして、青い〇で囲んでいる部分が無励磁吸引力のストロークと吸引力の関係です。 プランジャー復帰状態での負荷が、無励磁吸引力よりも小さいと通電をして復帰した後に、磁石の力で吸着状態に戻ってしまいます。

分かりにくいと思うので、具体例をあげて説明します。

例えば、グラフの24W 6%の曲線を見るとストロークが0.5mmの時、吸引力は8.0Nあります。

したがって、8.0Nまでの負荷を吸引することができますが、吸着力は6.0Nしかないので通電をOFFにすると6N以上の負荷では、吸着状態を維持できずプランジャーは元の位置に戻ってしまいます。

グラフの6W 25%の曲線の場合は、吸引力が吸着力を下回っているので吸引後に吸着状態を維持できます。

次に無励磁吸引力について、ストロークが2mmの時の無励磁吸引力を見てみます。

グラフの吸引力の値を読むと、約0.5Nの力で通電をOFFにしても吸引力が働いていることが分かります。

つまり、復帰状態の位置が2mmの時、負荷が0.5N以下だと復帰した後に無励磁吸引力によって吸引されてしまいます。

このように自己保持ソレノイドを使う時には、

吸着力よりも小さく、無励磁吸引力よりも大きくなるように負荷を設定してあげる必要があります。

自己保持ソレノイドの使い方

次に、自己保持ソレノイドの使い方について説明します。




自己保持ソレノイドが、プル/プッシュソレノイドと大きく異なる点は極性(+,-)があるという点です。
自己保持ソレノイドの仕組みは、磁石の磁界と同じ方向にコイルの磁界を発生させて吸引し、
磁石の力でプランジャーの吸着状態を維持、そして磁石の磁界と反発する方向にコイルの磁界を発生させて磁石の力を打ち消すというものです。
復帰の際は、磁界を打ち消すことでプランジャーが自由に動くようになり、バネなどの負荷で復帰します。
今述べた理由のため、磁石に合わせてソレノイドの極性を合わせてあげる必要があります。

磁束を打ち消し合って復帰させるため、磁石とコイルの磁界の強さは同じでないといけません。
したがって、復帰方向に通電する時コイルの磁界が弱すぎても強すぎてもいけません。
復帰するとき、コイルの磁界が弱すぎると磁石の力を打ち消せずプランジャーは復帰できませんし、
逆にコイルの磁界が強すぎると、今度はコイルが発生させる磁界によってプランジャーが吸着されます。




実際に販売している自己保持ソレノイド(CD0730)を例にあげて説明します。

上のグラフは、自己保持ソレノイド(CD0730)の復帰する方向に通電を行った時の復帰特性を示しています。

横軸がコイルの消費電力で縦軸がソレノイドの吸着力です。

CD0730はコイルの消費電力が、0.9W~1.3Wの時に磁石の吸着力をコイルが打ち消していることが分かります。

つまり、コイルの消費電力が0.9W~1.3Wの時、プランジャーには力が加わっておらず自由に動く状態になっており、バネなどの負荷が加わることでプランジャーが復帰位置に戻ります。

また、コイルの消費電力が0.9Wよりも小さいときは磁石の磁界によって吸着力が働き、コイルの消費電力が1.3Wよりも大きいときはコイルの磁界によって吸着力が働くため、プランジャーが復帰できません。

例として、CD07300240(抵抗値24Ω)をDC12Vで使おうと思った場合を想定します。

このソレノイドの復帰方向にDC12Vを印加すると消費電力は6Wとなりますが、

これではコイルの磁界が強すぎてプランジャーは復帰できません。

そこで、復帰する方向に通電する際、抵抗を通すことで消費電力を調整します。 この時、使用する抵抗Rは以下の式で求めることができます。

したがって、E=12V、W=0.9~1.3W、ΔR=24Ωをあてはめて計算を行うと、

復帰に必要な抵抗Rは、27~38Ωと求められました。

確認のため、求めた抵抗値でソレノイドの消費電力を計算してみます。

まず、オームの法則から「電圧/抵抗値」で回路に流れる電流値を求めます。

12V/(24+32.5)Ω=0.21 A

回路に流れる電流値が0.21 Aと分かったので、ソレノイドにかかる電圧を計算します。

電圧も電流値と同様にオームの法則「電流値×抵抗値」から

ソレノイドにかかる電圧=0.21 A×24Ω=5.04V

そして、消費電力は「ソレノイドにかかる電圧×電流値」で求められるので、

ソレノイドの消費電力=5.04 V×0.21 A=1.05 W

よって、自己保持ソレノイド(CD0730)が復帰する0.9~1.3Wの間に収まっているので、

初めに求めた抵抗R(27~38Ω)を復帰の際に通すことで、ソレノイドが復帰することが分かりました。

最後に、自己保持ソレノイドを駆動させる回路を紹介します。

自己保持ソレノイドは、吸引動作時と復帰動作時で必要な消費電力が異なるので、

吸引動作時と復帰動作時で電気の流れを変える必要があります。

下に載せている回路図はスイッチを使いソレノイドの極性を反転させて動作させて使う回路の一例です。

あまり複雑な回路ではないので、是非参考にしてみてください。

(参考WEBリンク)

ソレノイドの仕様    https://www.takaha.co.jp/technological/type.html

自己保持ソレノイドの簡単な説明   https://www.youtube.com/watch?v=3SXgBr_Gm7A

ソレノイドとは(自己保持ソレノイド編)  https://www.youtube.com/watch?v=AoaWi5xowOg

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